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フィクションなのかノンフィクションなのか... 想いが織り成すストーリーの世界
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掲載作品の紹介
●空色...愛色...(現在掲載中)
●愛色の彼方 (現在掲載中)

両作品共に、主人公の名前は同じですがストーリとしては全く別物です。
それぞれの世界が織り成す淡く切ない物語をどうぞお楽しみください。
プロフィール
HN:
葵 膤璃
性別:
女性
自己紹介:
Aoi Tuyuri
恋愛体質
本物の愛を探し求めて彷徨い続けています
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朝、携帯の着信音で目が覚める

私は、手探りで携帯を探し当てると通話ボタンを押す

「もしもし」

私はあくび交じりに電話に出た

『もしもし??まだ寝てたのかよ!』

声の主は安藤君だった
私は急に昨晩の事を思い出して、目が覚めた

勢い良く起き上がる

「え・・・お・・・起きてたもん」

見え見えの嘘をつく

『まぁ、良いや。それより、今から出かける支度しろよ』

「え?どこに出かけるの??」

私は、突然の安藤君の誘いに慌てる

少しの間を置いて安藤君は恥ずかしそうに一言

「・・・初デート」


私は目をパチクリさせる

初デート???
そっか、私達昨日から恋人同士になったんだ・・・

何だか妙な気分
くすぐったい様な・・・恥ずかしい様な・・・

悟との時も確か、こんな気分だったかな
私は、悟の事を思い出した事にハッとして首を横に振る

「うん、初デートしようか?」

私の一言に、安藤君は「迎えに行くから早く支度しておけよ」と何度も念を押して電話を切った

私は急いでシャワーを浴びて、メイクをして髪をブローしてと慌しく準備に追われる

「何着たら良いのかなぁ・・・」

クローゼットを全開にして、洋服を引っ張り出す

こんなに慌しい休日を過ごすのはどのくらい振りだろう???

全部の準備が出来た頃、携帯が鳴った

「下に着いた」

安藤君からの催促の電話に、私は慌てて自宅を後にする

外に出ると、安藤君が車の窓から手を出して振っていた

「お待たせ」

そう言って、助手席へ乗り込む

安藤君は、ジーンズに黒のインナーの上にカジュアルな上着で決めていた

「玲、可愛いじゃん!」

私の服装を見て、安藤君は嬉しそうな声を上げる

黒いシックなワンピースに黒いブーツとオフホワイトのジャケットを組み合わせた私を満足そうに眺める

たった一晩で、安藤君の私に対する呼び名は戸田から玲に変わった

私達は、車を走らせショッピングに向う

洋服を見たり、小物を見たりと久し振りに楽しく休日を過ごした

歩き疲れた私達は、雰囲気の良いカフェで一休みする事にした

私は、ロイヤルミルクティーを注文する
安藤君はカプチーノを注文した

「安藤君って女の子の好きなメーカーとか詳しいんだね!」

私は、少しゆったりめの椅子に深く腰をかけて一息つく

「ん〜まぁ・・・俺、妹いてさ現役女子大生な訳よ。彼女がいない事を良い事に買い物につき合わされまくってさ・・・そのお陰で大体解る」

安藤君はげんなりした顔をして見せた

「へぇ〜妹さんかぁ、仲良いんだね」

一人っ子の私には、兄弟や姉妹の話はとても羨ましく聞こえる

「いや、仲悪くないけれども連れ回されるのは俺が歩く財布だからだな。ちょっと年が離れているからつい甘くなっちゃうんだ」

不服そうに安藤君は溜息をつく

「安藤君、優しそうだもんね」

私は納得した様に頷いて見せた

「・・・玲さ」

「ん??」

「その、安藤君って止めない??」

「へ?」

安藤君が突然、真面目な顔して私を見る

「何か、安藤君って呼ばれるといつまでも友達な気がして嫌だ・・・」

「あ〜ずっと安藤君だったからつい・・・」

私は特に意識していなかったが言われてみれば確かにそうだ

「じゃ、早速呼んで見ようか?」

安藤君は少し身体をテーブルの方に突き出す

「え・・・何て呼べば良いんだろう」

私は突然の事に戸惑う

「下の名前なら何でも良いよ」

安藤君が期待の眼差しで私を見る

「・・・秀君・・・」

私は恥ずかしくて俯き加減に呼んで見る
即反応が返って来るかと思っていたが、暫くしても安藤君から反応が返って来ない
ちょっと心配になって私は顔を上げると安藤君は笑いを堪えた表情をしていた

「・・・駄目だった??」

私は不安になって聞き返す

「・・・いや・・・凄い玲が可愛い。不覚にも可愛くて言葉にならなかった」

安藤君は照れ臭そうな表情を浮かべる

「うん、秀君良いね!気に入った!」

そう言って、満足そうな笑顔で安藤君は繰り返した
こうしてこの日から私は安藤君を秀君と呼ぶようになった


休憩を済ませ、私達は店を出る
すると目の前にちょっと変わった可愛いお店がある事に私は気付いた

「あのお店覗いても良い??」

私は秀君に訊ねるとその店に入った

そこは便箋の専門店らしく
所狭しと、可愛い便箋や少し変わった便箋が並べられていた

「便箋の専門店なんて変わってるな」

秀君も不思議そうに眺める

「うん、こんなにレターセットがあると迷っちゃうね」

私はそう良いながら店内を見て歩く

すると、ひとつの便箋に目が止まった

綺麗な青空の便箋
淡い色合いがとても綺麗だった

悟、空好きだったんだよね

よく天気が良い日のデートで、悟は青空の写真を撮っていた
私は、そんな悟の空の写真が好きだった
大きくて優しくて温かい

その悟の撮る写真の空とその便箋の空が似ている様に思えた

あれからも、悟に手紙を書き続けていた私はこの便箋で手紙を書きたいと思った
手に取ってレジへ持って行こうとした瞬間
秀君がその便箋を私から取り上げる

「これ欲しいの?」

秀君は私を見る

「うん・・・」

秀君を直視出来ず頷く

すると秀君はレジへ向う

「え、秀君??」

私は後を追う

秀君は黙って会計を済ませると店を出た
その後を足早に追う

店から出ると、秀君は黙ったまま私にその便箋が入った袋を手渡した

「お金・・・」

私は鞄から財布を取り出そうとすると、秀君に止められた

「良いよ。俺が買ってやる」

秀君は私に便箋を突き出す

「ありがとう・・・でも・・・」

「彼に手紙書くんだろ??」

秀君はそう言って私に背を向ける
私は気まずい気持ちになって何も返せない

「何だよ!そんな困った顔するなって!」

振り返った秀君は笑いながら私の頬を両手で摘む

「俺、言ったよな?彼を忘れなくて良いって」

「うん」

「なら、俺を信じろよ。手紙書きたかったら思う存分書けよ」

私は秀君を見上げる

「その代わり、もし逢う事があったらその時はちゃんと言って。逢うなとは言わないけれども、黙って逢われるのは俺嫌だから」

「うん、解った・・・でも何で手紙を書くって解ったの??」

秀君は少し考える素振りを見せると私の手を取って歩き始めた

「今、玲が手紙を書くとしたら単純に相手は彼だって思うだろ?それに、俺3年も玲を見てきたんだぞ?それくらい見ればすぐ解る」

秀君はそう言って繋いだ手を大きく振った



夜、自宅の前まで秀君は私を送ってくれた
自宅の前に着くと、秀君は私の頭を撫でながら「これからもずっと一緒にいような」と私に向って優しく囁いた

私はその言葉に対して頷く

「じゃ、早く寝ろよ」

私が車を降りるのを見送って、秀君は冗談ぽく笑った

「うん、秀君も気をつけてね。今日はありがとう」

そう言って私は車のドアを閉める

助手席側の窓が開いて秀君は一言

「こちらこそありがとう。淋しくなったらいつでも電話でもメールでもして来いよ」

そう言うと、秀君は車を走らせてその場を後にした
私は秀君の車が消えるまで見送る

腕の中には秀君が買ってくれた便箋
私は、その便箋を暫く見つめる

私、きっと最低な事を秀君にしてるんだろうな
そう思うと、落ち込んだ気持ちになる

そして、心の中で何度も呟いた

もう少しだけ待っててね・・・


いつか秀君だけを見つめられる日が来るまで・・・
今はまだ私の心には悟がいる
もう少しだけ私に時間をください・・・

後少しだけ・・・
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