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フィクションなのかノンフィクションなのか... 想いが織り成すストーリーの世界
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掲載作品の紹介
●空色...愛色...(現在掲載中)
●愛色の彼方 (現在掲載中)

両作品共に、主人公の名前は同じですがストーリとしては全く別物です。
それぞれの世界が織り成す淡く切ない物語をどうぞお楽しみください。
プロフィール
HN:
葵 膤璃
性別:
女性
自己紹介:
Aoi Tuyuri
恋愛体質
本物の愛を探し求めて彷徨い続けています
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気が遠くなる程の晴天

優しく差し込む日差し

爽やかな風


全てがまるで祝福してくれているかの様に素敵な日

私は控え室のミラーの前にウエディングドレス姿でその時が来るのを静かに待っていた

純白のオーガンジーのフワフワのドレスが太陽の光に照らされて白く輝きを放っている

鏡に映る自分はいつも知っている自分ではない様だ

あの日以来、悟の事が頭から離れずにいた
もうじき時計の針は13時を指そうとしている

私は、ハッとして頭を横に振る
今は自分の幸せの事だけを考えなければいけないんだ・・・
私は鏡に映る自分にそう言い聞かせる

すると、控え室の扉が開く

両親が入って来ると、歓喜の声を上げる


「玲、綺麗!」

母は嬉しそうに目を細めて私を見つめる
父も嬉しそうに微笑んでいた


「こんなに早く、玲がお嫁さんになっちゃうなんて思わなかったけど本当に良い人に出逢えて良かったわね!」

母は私の手を取って早くも少し目を潤ませる

「お母さん・・・」

私も釣られて目が潤んでくる

「駄目よ〜駄目!泣いたら綺麗なお化粧が崩れちゃう!」

そう言って優しくハンカチで私の涙を拭う


少しの間流れる沈黙の時間

私は改まって両親に向かい合うと最後の挨拶をする

「お父さん・・・お母さん、今まで大切に育ててくれてありがとう。何も親孝行らしい事まだ出来ていないけれども、私・・・必ず幸せになります。本当に今日までありがとうございました」

そう言って私は頭を下げる


普段、穏やかで優しい父は「幸せになれよ」と一言私に言うと控え室を出て行った

「お父さん、泣いちゃいそうだったのよきっと」

母はそう言って笑う




私と秀君は、綺麗な風景が広がる小さな教会で式を挙げる
そこは、敷地内に綺麗なレストランがあり
式の後にそのレストランでガーデンパーティーなどが出来る為、プライベートウエディングのカップルに密かな人気があった


私が教会の入り口へ連れて来られると、既に緊張した面持ちの父が立っていた
私もこんなに早く父とバージンロードを歩けるとは思っても見なかった


私は黙って父の隣りに立つ
父も無言のまま立っていた

暫く流れる無言の時間

こんな時、不思議と子供の頃の記憶が次々と蘇ってくる

父は、優しい人だ
いつも穏やかで、私にとって太陽の様な存在で
だけれども、礼儀や作法にはとても厳しい人だった
そのせいか、私は小さい頃からありとあらゆる習い事をしていた

言葉数は少ない人ではあったが、私は書斎にいる父の膝の上で絵本を読んで貰うのがとても大好きだった

「そろそろ準備はよろしいですか?」

スタッフの女性がにこやかな微笑みを浮かべる

私は父の腕に手をかけた

その時一言、父はまるで独り言を呟くかの様に「娘でいてくれてありがとう」と呟いた事を私は聞き逃さなかった
だけれども、何て返せば良いのか私は解らず無言のまま俯く

涙が零れそう・・・
ベールで隠された私の表情は父からは見えないが、私は今にも泣き出しそうだった



私と父は開かれた扉へ向って一歩一歩進み始める

そこには祝福の笑顔が溢れていた
誰もが私を祝福してくれている

何だか不思議な感じがする


私は一歩一歩、バージンロードを進む


「おめでとう!」

みんなの一言に私は微笑みで返す


そして、ついに秀君の前に辿り着いた
私は父から離れ、秀君の手を取る


「よろしく頼むよ」

父は秀君にそう一言告げ頭を下げた

「必ず幸せにします」

秀君もそう父に告げ頭を下げる


私達の誓いの儀式が始まった


「死が二人を分かつまで、愛を誓い、妻を想い誇りとする事を誓いますか?」

細身のスレンダーな牧師が誓いの言葉を読み上げる

「はい、誓います」

秀君は静かにそう答えた



「死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い誇りとする事を誓いますか?」

私へ牧師が言葉を投げかける


はい、誓います



・・・そう一言を言うだけなのに


どうしたのだろう・・・

言葉が出てこない

私は牧師を真っ直ぐに見つめたまま言葉を発せられずにいた

牧師は不思議そうな表情を浮かべる

なかなか花嫁から誓いの言葉が出てこない事に対して背後からもざわめきが聞こえてくる

「玲??」

秀君も不思議そうに私の顔を軽く覗き込む


そう・・・ただ、誓いますって言えば良いのに
その一言が出てこない
胸と喉の辺りに大きな塊が引っかかっている様で・・・

私はその場に立ち尽くす


私・・・秀君の事、好き

一緒にいたいと思う

大切にしたい

幸せな家庭を築きたい



でも・・・私・・・


私は静かに秀君を見上げる

秀君は心配そうに私を見つめていた


私・・・
本当に後悔しない?

私、愛する資格あるのだろうか


悟の事・・・忘れられる???


悟・・・






私は何か塞き止めているモノが崩壊したのを胸の奥で感じた





私は、後ずさりをする


「玲?」

秀君は少し驚いた表情を浮かべる


「・・・ごめん・・・私・・・行かなくちゃ」


そう秀君に告げると、私はドレスの裾を抱えてバージンロードを走り出す

「玲!どこに!!!」

背後で秀君の声がした

私は止まる事も振り返る事もせず、ただ真っ直ぐ走り続ける


表通りまで走ると、私はタクシーを止め乗り込んだ


「ガーデンパークまでお願いします」

そう告げる

ドアが閉まった瞬間、秀君が追いついて窓ガラスを叩く

「玲!!!」

秀君は真っ青な表情で叫んだ

「出てください!」

私は戸惑う運転手にそう強く告げる

タクシーはそのまま走り出した

タクシーのスピードが上がると共に、どんどん小さくなる秀君の姿を見つめる

私は荒くなった息を整えながら、窓を流れる景色を眺めていた

私、きっと取り返しのつかない事をしてる
秀君の事も酷く傷つけた
今頃、大騒ぎになってるだろう
私は溜息をつく

「お客さん、何があったか知らんがそう気を落とさんで。人生色々だよ」

50代くらいの運転手がバックミラー越しに微笑む

「・・・ありがとございます」

私は、そう言って再び景色へ目を向ける

眩しい日差しに照らされて、緑達は青々と輝いていた


私はただそんな風景を見つめ高鳴る鼓動を抑える



悟に聞きたかった・・・
真実を・・・
私・・・悟に逢いたい・・・例えこれが最後であったとしても・・・


私を乗せたタクシーは、ひたすらガーデンパークを目指して走り続ける





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