あれ以来、久美さんの言葉が私の頭から離れなかった
自分に向き合うって・・・どういう事を指すのだろう
簡単な様で難しい
様々な自分の立場や、状況によって人間はきっと無意識に理性を働かせてしまうのだろうか
私は本当の自分の気持ちを隠して、流れていく周りに理性で合わせてしまっていたりするのかな・・・
私は、話を聞いて欲しくてマユミをカフェへ呼び出した
こんな時にも嫌な顔ひとつせずマユミは、駆けつけてくれた
「どうしたの??」
私の空気を敏感に察したのか、マユミは心配そうに私の顔を覗き込む
「ううん、大した事はないんだけれどもね・・・」
私は、今の不安や気持ちや久美さんとのやり取りの事などをマユミに話す
私の話を一度も遮る事なくマユミは最後までただ聞いていた
私が話し終えると、マユミは静かに口を開く
「確かに、色々玲もあったし簡単に割り切れないモノもあるよね。どんな人間だって常に不安は抱えているものだし・・・私にはよく解らないけれども、これってマリッジブルーってやつじゃない??」
私は、マユミの言葉にキョトンとする
マリッジブルー??
よく、結婚する友達が言っていた気がする
結婚する女性にはよくあるって話も聞いた事がある
この感情や気分は・・・マリッジブルーだから??
「多分、私の王子様ってこの人なのかしら〜って直前まで考えちゃったりするんじゃない?もしかしたら、もっと別の人だったのかも・・・とか」
マユミは私を見て笑う
「そうなのかな・・・」
そう考えてみればそうなのかもしれない
「確かにね、玲はまだ悟君の事を吹っ切れていない部分は大きいと思うけれどもね」
マユミはアイスコーヒーを飲みながら呟く
「・・・やっぱり、この状況でそういうのっていけないのかな・・・」
私はアイスカフェラテのグラスを握り締めてマユミに問いかけた
「ん〜良いんじゃないかな?人間ってそんなに単純な生き物じゃないし、誰にでもひとつやふたつ忘れられない過去ってあると思うし・・・大切なのはこれからをどうして行くかって事だと私は思うよ?」
そう言ってマユミは微笑む
「玲、安藤さんを離しちゃ駄目だよ?あんなに愛してくれる人って人生にそう何人といないんだからさ」
マユミの言葉に私は深く頷く
そうだよね
過去はもう消せない
大切なのは未来をどうして行くかって気持ちなんだ
私はマユミの言葉に深く納得する
だけれども、久美さんの言葉も私は共感する部分が大きかった
結婚式が終われば私の心もきっと秀君だけに固まるだろう
秀君と同じ名字になって
毎日、一緒にご飯を食べて眠って
いつか子供が出来て、パパとママになって
ひとつの家族が築かれて行く
きっと私の選択は間違っていなかったって心から思える日が必ず来ると私は思った
きっと悟も同じ様に誰かと家庭を築いて行くのだろう・・・
そう思うと少し心が痛むが、お互いが幸せでいる事が何より大切なんだと感じる
いつかどこかで偶然、再会出来た時
私は悟に心からの笑顔を見せられると良いな・・・
私はあと少しで、秀君の妻になります・・・
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