2人の加速は止まらない
1日1日、確実に2人の距離は縮まっていた
そしてついに、電話で話す日がやってきた
“これから電話して良い?”
Keiの一言で、玲は思わず携帯を握った
自分の鼓動が早いのが解る
文字のやり取りだったKeiとついに声で会話をするのかと思うと、ドキドキが止まらない
そしてついに、玲の携帯が鳴る
『ど・・・どんな声で出れば良いのかな・・・』
玲は震える指でボタンを押して携帯に出た
「こんばんは」
Keiの第一声
想像していた声とは全く違っていた
どっちかって言うと、Keiのイメージ的に低い声だと玲は思っていたのだ
しかし、実際に聞こえてくるKeiの声は高めだった
「こんばんは・・・」
恥ずかしさで、声が震えている様に思える
「お~玲や、電話では初めましてやな」
「うん、初めまして」
『本当に男の人だぁ・・・』
玲は内心、これでKeiが確実に男である事の確証が取れた事に安心していた
ここまで来て、女ですとか言われたらある意味洒落にならない
暫く手探りの会話が続く
「そうだ、本名教えておくわ」
Keiが突然思い立った様に切り出した
「Keiって本名と全然違うの??」
「全然、違うんだよね」
Keiはちょっと照れ臭そうに笑った
玲はてっきりKeiは本名にちなんだHNだと思っていたのだ
「俺、市川悟って言うねん」
これまたKeiから全く連想出来ない名前に、玲は暫く軽い放心状態になっていた
「・・・さとる・・・悟????」
玲はちょっと上ずった声をあげる
何だか、ピンッと来ない
普通過ぎる名前に違和感を感じた
「玲は??」
Kei・・・悟は玲に質問する
「私は武井玲だよ」
「あ~そうなんや」
悟は逆に、HNと本名が同じで意外な声を上げた
「でも、何でKeiなの?全然本名と被ってないじゃん」
「あ~友達にKeiって言う奴がおったんやけど・・・何かKeiって響き良くない??」
悟の言葉に玲は思わず噴出す
「友達の名前パクッたの??」
玲はあまりにまぬけな理由に、笑いが収まらない
すっかりKeiの本名騒動で緊張が吹っ飛んでしまった
それからの2人は毎晩の様に電話で話をした
電話をしながら、チャットに参加したりしては楽しんでいた
着実に2人が逢う日は近付いてくると比例する様に、2人の距離も確実に近付いていった
この時、玲はもしかしたら悟に小さな恋心を抱いているのかなっと思い始める
まだ逢った事もない、声と画像の顔しか知らない人に恋をするのは可笑しい話に思えるけれども
確実に、玲の中で悟の存在は大きくなっている事は確かだったPR