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フィクションなのかノンフィクションなのか... 想いが織り成すストーリーの世界
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掲載作品の紹介
●空色...愛色...(現在掲載中)
●愛色の彼方 (現在掲載中)

両作品共に、主人公の名前は同じですがストーリとしては全く別物です。
それぞれの世界が織り成す淡く切ない物語をどうぞお楽しみください。
プロフィール
HN:
葵 膤璃
性別:
女性
自己紹介:
Aoi Tuyuri
恋愛体質
本物の愛を探し求めて彷徨い続けています
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暫くして、ミユキは私の前に現れた

長身で細身のミユキ
笑顔が似合う明るい表情に、ライトブラウンのショートヘアーがとてもマッチしている

「見つけた!」

そう言ってミユキは私の前に座る
そのままウェイターにアイスカフェオレを注文すると、一息ついて私に笑いかけた

程なくして、ウェイターがアイスカフェオレをミユキの前に差し出す

それを見届けてミユキは話を切り出した

「ちゃんとご飯は食べてる?」

ミユキの質問に私は首を横に振った

「・・・そっか。今は辛い時期だよね」

ミユキは軽く溜息をつくとアイスカフェオレに口をつける

「つまりさ・・・玲は別れの理由に納得が出来ないんじゃないの?」

ミユキの一言に私は顔を上げてミユキを見る

「ん〜なんて言うのかな・・・仕事が理由で別れを告げられた訳じゃない?」

「うん」

「でも、世の中仕事と恋愛を両立している人はたくさんいる訳だし、仕事だけの理由で別れるって事に納得がいかないんじゃない?相談も無かった訳だしさ」

確かに、何も相談されずに結論を出された事はとてもショックだった
勿論、別れたく無い事は必死に伝えたけれども彼の意見が翻る事は無かった

「悟君も結構勝手だよね。もう少し、大人かと思っていたけれども・・・」

ミユキは眉間に皺を寄せる

彼の名前は高木悟
都内の外資系の企業に勤めている

出逢いは、飼い犬のマロンが失踪した事がキッカケだった
ミニチュアダックスで毛色が栗みたいな色だからマロン
そんなある日、好奇心旺盛なマロンは玄関を開けた隙に外へ飛び出してしまった

しかも夜遅かった為、辺りは真っ暗でなかなか見つけられなかった

涙ぐみながらしゃがみ込んでいた私に見ず知らずの悟が声をかけてくれた

スッとした整った顔立ちの悟
シックに着こなしたスーツ姿が印象的だった

事情を話すと悟は、綺麗に着こなしたスーツをたくし上げ一緒に探してくれた
結局、公園の茂みの中に怯えて丸まっていたマロンを発見した

満面の笑顔でマロンを抱き上げた悟に、私は一瞬で恋に堕ちた
それは何とも言えない感覚で・・・
不思議な力が働いたかの様に、私は悟に恋をした

マロンを夢中で探していた悟のスーツが汚れてしまった事を気にすると、悟は笑顔で大丈夫だと言ってくれた

それでは気が済まないと、少し戸惑う悟に後日お礼をする約束を取り付けた
でも本当は、このまま終わるのが嫌だったからなのかもしれない
悟の事をもう少し知りたかった

それをキッカケに連絡を取り合う様になった私達は、ごく自然な流れで付き合う事となった

マロンを連れてデートにもたくさん行った
私にとってもマロンにとっても本当に楽しい時間だった

そんな中、1年経とうとした頃
マロンは肺炎を悪化させて4歳と言う短い生涯を終えてしまった
泣きじゃくる私と一緒に、悟も泣いてくれた

そして2人でマロンのお墓の前で誓った
マロンがもたらしてくれた縁を大切に必ず2人で幸せになるって・・・

悟は、もうマロンへの誓いも忘れてしまったのだろうか
その程度の気持ちだったのだろうか

そんな事があったからこそ、仕事を理由に別れを切り出された事に納得出来ないでいたのは確かだった

別れ話をされたあの日
悟は、私を見なかった
ただ、無表情に別れ話をする悟

悟がまるで無機質なアンドロイドの様に見えた

ただ、最後にかすかに震える声で「ありがとう」と呟いた

あの瞬間、悟は何を思っていたのだろう・・・

でも、これだけは解る
決して、身勝手に別れを切り出した訳じゃない
きっと切り出すまで悟は悩みに悩んだと思う
眠れない夜を過ごしたかもしれない

悟はひとつも私に優しい言葉はかけなかった

それは、私が淡い期待を抱いてしまわない様にとの最後の優しさだったのかもしれない

それでも淡い期待を抱いてしまう私は、悟へ電話をしてしまう事があった
そんな時、悟は普通に今まで通り話てくれたけれども、私が「逢いたい」と言っても一度も逢ってはくれなかった

「逢うともっと辛くなるよ」

そう言って逢ってくれなかったのだ

でも、それもきっと悟なりの優しさだったのかもしれない



「悟も・・・きっと辛かったと思う」

私はポツリと呟く

「凄く考えて考え抜いた結果だったと思う・・・」

私は目頭が熱くなるのを必死で堪える

「そうだね、ごめんね。玲の大好きな悟君の事悪く言っちゃって・・・」

ミユキはハンカチを手渡しながら私の顔を覗き込んだ

「ううん、ミユキは悪くないよ。気にしないで」

逆に私は慌ててミユキの顔を見る

「ありがとう。でも、今回ちゃんと仕事にも行っているしそれだけでも私は偉いと思うよ」

そう言ってミユキは微笑む

悟がいなくなっても、変わらず毎日が過ぎて行く
私の心なんてどこにも存在しないかの様に
同じ日常
繰り返される毎日

あの頃と違うのは、色鮮やかだったあの頃と色褪せた今

私は後どのくらいの時間をかけて立ち直るのだろうか
いつか、あの頃は辛かったって笑って話せる日が来るのだろうか

いつか・・・

悟は思い出の人となってしまう日が来るのだろうか


辛くて苦しいはずなのに・・・
そんな日が来なければと思ってしまう私

私は悟を忘れたくない
あの笑顔も、仕草も声も匂いも・・・

それでも、いつか私は遠い記憶の中へと葬ってしまう日が来るのだろうか・・・



その後、私を元気付けようとするミユキにあっちこっち連れ回され
自宅に帰ったのは夜の11時だった

今夜は酷く眠い・・・
ワインを少し飲み過ぎただろうか

私は重い身体を引きずりながら、寝室へ向う

そしてそのままベッドへ倒れこむと、深い眠りへと堕ちていった

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