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フィクションなのかノンフィクションなのか... 想いが織り成すストーリーの世界
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掲載作品の紹介
●空色...愛色...(現在掲載中)
●愛色の彼方 (現在掲載中)

両作品共に、主人公の名前は同じですがストーリとしては全く別物です。
それぞれの世界が織り成す淡く切ない物語をどうぞお楽しみください。
プロフィール
HN:
葵 膤璃
性別:
女性
自己紹介:
Aoi Tuyuri
恋愛体質
本物の愛を探し求めて彷徨い続けています
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私はあの日から1週間仕事を休んだ

最近、様子がおかしい私に久美さんは「少し休んで冷静に色々考えてみなさい」と一言だけ言った

仕事に行く気がしなかった私は、溜まった有給を消化する形で休む事にした
暫く何もしたくなかった

その代わり、悟へ手紙を書き続けていた
どこにいるか解らない為、私は手紙を悟の実家へ送り続けた
悟に届いているかも解らない
届いていても迷惑に感じてしまっているかもしれない
それでも、毎日1通ずつ悟に手紙を書き続けた
そうでもしないと自分を保っていられなかったのかもしれない

誰とも会わない日が続く
時折、安藤君がメールで仕事の状況などを送ってくれるくらいしか他人との接点は無かった


泣き続けているせいか、瞼が腫れて重たい

私、今酷い顔してるんだろうなぁ・・・

ベッドの中に包まったまま毎日無駄に時間を過ごす


食事も摂らず部屋のカーテンも空けない日が続いた


金曜日の夜、私の携帯の着信音が鳴った
安藤君からの着信

「はい、もしもし」

私は、電話に出る

『戸田、調子はどうだ?どうせ食事してないんだろ??』

いつもと変わらない安藤君の声
淋しい心に染みる

「うん・・・」

『今から出て来いよ、食事しよう』

安藤君は私を気遣ってきっと外へ誘い出そうとしてくれているのだろう

『食べないと元気出ないぞ?気晴らしに外で食べよう、もう今下にいるから』

私はビックリして、部屋の外を覗き込む
下で、安藤君が満面の笑顔で手を振っていた

「・・・ちょ・・・ちょっと待ってて支度して行くから」

私は慌てて洋服に着替えて髪を整える
玄関を出ると、ひんやりと涼しい

「お待たせ!」

私は安藤君の元に駆け寄る

「お〜待った待ったw今日は、お兄さんがご馳走するから好きなモノ食べろ〜」

そう言って安藤君は私の手を引いて歩き出した
安藤君の手は想像以上に大きくて温かかった
誰かに手を引かれるなんて、どのくらい振りなのだろう・・・
私は、そんな事を考えながら安藤君の背中を見つめる



………………………

私達は、近くのこじんまりとした和食の店に入る

店に入ると人の良さそうな年配の女性が笑顔で出迎えてくれた

「あら、秀ちゃんいらっしゃい」

そう言って、私達をカウンターに通してくれた
私が不思議な顔をしていたのか、安藤君は笑顔で説明してくれた

「ここ、俺のオススメの店なんだ。学生時代から通ってるけど凄い美味いんだ」

そう言って、カウンターに座る
私も後を追う様に隣りに座った

年配の女性は嬉しそうに私を見ると安藤君を見て言った

「秀ちゃんの彼女??可愛いじゃない!」

私は年配の女性の言葉に驚くと共に、化粧をしていない事が急に恥ずかしく思えてきた

「ち・・・違うよ〜同僚の戸田。こっちはこの店のママ」

安藤君も焦った様に否定をする

「あら、違うの?残念だわ〜全然女の子連れて来たりしないから私は心配してるのよ」

そう言って人が良さそうに豪快に笑う

「どうせ、全然食べてないんだろ??ならさっぱりしたモノが良いよな?」

安藤君はお店のママが出してくれた生ビールを飲みながら私を見る

「うん、さっぱりしたものが良いかも」

私もウーロン茶を口にする

「いや〜やっと1週間終わった・・・戸田がいないから俺が死にそう・・・」

そう言いながら安藤君はネクタイを緩める

「ご・・・ごめんね」

私はウーロン茶を噴出しそうになりながら安藤君へ視線を向ける

「嘘〜!冗談だよ!」

そう言って安藤君は意地悪そうに笑った

「まぁ、食べろよ。ここの料理は何でも美味いからさ!」

お店のママのお手製料理がズラリと並ぶ
どれもこれも確かに美味しかった
特に魚の煮付けは格別に美味しくて、今まで食欲が無い事が嘘の様に私の胃袋に消えていった

「思ったより元気そうで良かった」

それを見ていた安藤君も安心した様に笑う

「あ、俺ちょっとトイレ行ってくる」

そう言って安藤君は席を外した

「今日の秀ちゃんはご機嫌だね〜!」

ママがカウンター越しに嬉しそうに話しかけてきた

「安藤君はいつもあんな感じじゃないんですか?会社ではいつもあんな感じですけど」

私は、ママが出してくれたお茶を受け取りながら訊ねた

「いつも確かに明るい子だけど、結構気を使ってるのよ。だからここに来て落ち込んでたりって事はいつもの事なのよ」

ママはそう言いながら優しく微笑む

「へぇ・・・落ち込んだ安藤君って想像つきませんね」

「何たって、あんなに男前なのに好きな子にすらアタック出来ない子だから」

悪戯な表情を浮かべてママが小声で言う

「そうなんですか??」

私は思わず噴出す

「そうなのよ、酔っ払うといつもその話でね。今だに何も出来ないんだ〜ってよく嘆いているのよ」

ママは口の前で人差し指を立てて笑った

「あれ?ちょっとちょっと何か面白い話??」

戻ってきた安藤君は楽しそうに会話している私達の間に入って来る

「内緒よ、ね〜?」

ママは私に向って軽くウィンクする

「はい、内緒です」

私は意地悪そうに笑って見せた

「何それ〜仲間外れかよ!」

本気で悔しがる安藤君は、会社とは少し違う少年らしさが残っていた


………………………


私達はお腹一杯に食べて、ママの店を後にした

「少し腹ごしらえに散歩するか」

安藤君の提案で、近くの川沿いを歩く

「安藤君、見て見て星が今日は凄く綺麗じゃない??」

私は安藤君の腕を引っ張って空を指差した

「あ〜本当だ・・・」

安藤君は空を見上げたまま立ち止まる

「今日は本当にありがとうね。お陰で凄く良い気分転換になったよ。ママの美味しい料理も食べれたし、来週から仕事頑張れそう!」

私は力瘤を作る真似をして見せた
本当、不思議と少し元気が出た気がする

「・・・戸田」

安藤君に背を向けて歩き出そうとした瞬間、呼び止められた

「ん??」

私は足を止めて安藤君の方へ振り返る

「あのさ・・・こんな時にって思うんだけど」

そう言って安藤君は空から視線を落として私を真っ直ぐに見る

「どうしたの??」

私は安藤君の少し真剣な表情を覗き込む

「俺・・・戸田の事好きだよ」

安藤君は意を決意した様に私に言った
私は突然の安藤君の一言に返す言葉が見つからない

暫く流れる沈黙

安藤君の真っ直ぐな視線から逸らせないまま私は言葉を探す

「ずっと好きだった、入社した時から」

予想もしなかった安藤君の言葉
3年も一緒に仕事していて、今の今まで安藤君の気持ちに気付けないでいた

「戸田を好きになったのは別れた彼より俺の方が長いよ。ずっと俺は戸田だけ見てた」

ストレートな安藤君の言葉
私はまだ言葉が見つからずにいた

「彼を忘れろなんて言わない。すぐに切り替えられないのも覚悟の上だ。それでも良いから、俺の隣りにいてくれよ」

長い沈黙が流れる
お互い見つめ合ったまま時間だけが流れる

「私・・・」

やっと声が出せた
喉がカラカラに渇いている

「何?」

安藤君はとても優しい声で問いかける

「まだ、これからも彼の事で・・・泣いたり落ち込んだりすると思うし・・・その度にきっと安藤君嫌な想いする・・・」

「それも解ってる」

「・・・今・・・私弱ってるから・・・そんな事言われると寄りかかりたくなってしまうかもしれない・・・それは自分で許せない・・」

私は安藤君から視線を逸らして背を向けた

次の瞬間、背後から安藤君は私を抱き締める
背中に安藤君の温もりを感じる
妙な安心感が私を包んだ


「それでも構わない・・・俺の方がきっと卑怯だ。戸田の気持ちを知ってて困らせる様な事言ってる・・・それでも俺、好きなんだ」

耳元で安藤君の声は震えていた
安藤君の腕が微かに震えている

安藤君の温もりと言葉に私の心は絆されてしまいそう・・・
けれども悟の事・・・割り切れない・・・

でも・・・悟は私の前から跡形も無く消えてしまった
もう逢えないのかもしれない
嫌われてしまったのかもしれない

私・・・前に進まないといけない

安藤君の手を取る事が正しいのかも解らない

安藤君とならきっと楽しく過ごせる気がする
好きになれるかもしれない・・・

これは私の甘え??

だけれども、誰かの肩に寄りかかりたい自分が確かにいる

それに、私も安藤君の事好きだよ

これは友情?
それとも異性として意識してる??

優しくされると嬉しい
いつも助けてくれる安藤君は、私にとって大切な存在
私の事もよく理解してくれている
今の私に、安藤君の存在は必要不可欠である事は間違いない


暫くの沈黙の後
私は沈黙を破った

「・・・これからも私の隣りにいてくれる??」

一瞬、安藤君の腕の力が緩む

そして、もう一度強く抱き締め直すと安藤君は何度も頷いて一言だけ耳元で呟いた

「勿論だよ」



その日の夜空は、確かにいつもより綺麗だった

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