時はゆっくり確実に過ぎ私と秀君が付き合って1ヶ月が経とうとしていた
大きな波風も無く穏やかに時間は過ぎて行く
私は約1ヶ月振りに仕事が終わった後、マユミと夕食の約束をしていた
足早に待ち合わせ場所へ向う
街は仕事を終えたOLや学生やらで、大賑わいだ
人混みを掻き分けて前へ進む
お洒落な時計台の前で立っているマユミが視界に入った
長身でどこか洗礼された雰囲気を持つマユミは遠くからでも人目を引く
「お待たせ!」
私は、手を大きく振りながらマユミの元へ駆け寄った
「あ〜玲、遅かったじゃん!」
マユミは私を見つけると、太陽の様な笑顔を浮かべる
私達は、並んで歩き出す
10分程歩くと、隠れ家的なお洒落な建物が現れた
マユミの穴場のお店だと言う
店の中に入ると、40代くらいの紳士が出迎えてくれた
私達は、奥へと通されるとそこは間接照明とキャンドルで温かく演出された空間が広がっていた
「ここ、結構素敵でしょ?」
マユミはメニューを広げながら私に声をかけた
「うん、凄い!こんな所にあるなんて想像もしてなかった!」
私は、マユミからメニューを受け取りながら答える
モダンな感じもあるし、ちょっぴりレトロな感じもする
品のある店だ
私達は、シェフのおすすめコースを注文する
暫くして、先程の紳士が現れると食前酒にシャンパンを振舞ってくれた
紳士の仕草のひとつひとつが洗練された品を醸し出していた
私達は、軽くグラスを合わせる
「で、どうなの?」
爽やかなシャンパンの風味を楽しんでいるとマユミは我慢出来ないとばかりに身を乗り出して私に問いかけてきた
「どうって・・・」
私は返答に少し困って言葉を詰まらせる
「新しい恋愛よ!順調に行ってる??」
「うん、とても良くしてくれて凄く毎日が安定してるかな」
私は、ちょっぴり照れた様に笑って見せた
「へぇ〜1ヶ月会わなかっただけで、玲もすっかり元気になっちゃってビックリ!ちょっと、彼にジェラシーかも」
マユミは、冗談めかしに笑う
「うん。でも、やっぱりまだ悟の事は割り切れてないんだ・・・それが秀君に対して申し訳なく思っちゃって・・・」
私は視線を落とす
「それは仕方ないでしょ〜それを覚悟でって彼も言ってくれているんだし、今は甘えちゃって良いんじゃない??にしても、世の中には奇特な人もいるものよね!」
マユミは少しオーバーに驚いた様に眉を上げて見せた
「うん、私も思う・・・3年一緒に仕事してて全然気が付かなかったし」
「玲ってさ、何て言うんだろう・・・マイペースって言うか鈍い所あるからね」
マユミの一言に、私達は見つめ合うとふたりで噴出す
とにかく私は溜め込んだモノを一気に吐き出すかの様にマユミ相手に話し続けた
不安に想う事
戸惑う事
嬉しい事
切ない事
言葉が追いつかないくらいたくさんの想いが、次々に溢れていく
そんな私の話に、静かに耳を傾けるマユミ
お洒落な空間と美味しい料理が、更に恋の話を盛り上げたのかもしれない
こんな時私はいつも思う
私は色々なモノに囲まれまれて
たくさんの人に守られているんだって
そして、それがどんなに尊い幸せなのかを改めて悟る
こうしていつでも、私の話に耳を傾けてくれる親友
ずっと陰で見守り続けてくれていた大切な人
さり気なく進むべき道を諭してくれる尊敬する人
感謝をしてもしきれない
私がこうして今を生きているのもきっと、私を支えてくれる人達がいるから
みんながそれぞれの形で私を愛してくれているからなのだろう
私達はその日、時間を忘れて語り続けた
その瞬間が2度とない事を惜しむかのように
息つく暇もなくお互いの事を語った
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