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フィクションなのかノンフィクションなのか... 想いが織り成すストーリーの世界
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掲載作品の紹介
●空色...愛色...(現在掲載中)
●愛色の彼方 (現在掲載中)

両作品共に、主人公の名前は同じですがストーリとしては全く別物です。
それぞれの世界が織り成す淡く切ない物語をどうぞお楽しみください。
プロフィール
HN:
葵 膤璃
性別:
女性
自己紹介:
Aoi Tuyuri
恋愛体質
本物の愛を探し求めて彷徨い続けています
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季節は移り変わり
街は、少しずつ色を変えて行く

空気は凛と冷たさが張り詰め
世間はクリスマスカラーに染まっていた

私は買い物袋を下げ足早に自宅へ向う

今日はクリスマス・イヴ

街がときめきに弾むと共に、私の心も躍る

イヴだと言うのに秀君は山の様に残った仕事の為に出勤している
なるべく仕事を早く切り上げて私に逢いに行くと秀君は約束をしてくれていた

だから、私は美味しい料理を作って帰りを待つ事にした

街からは、クリスマスソングが軽やかに響く
釣られて私も鼻歌交じりに歌う

秀君、喜んでくれるかな

私は買い物袋の食材を覗き込むと秀君の顔を思い浮かべる

付き合って3ヶ月

相変わらず私達の付き合いは順調だった
週末には、決まって秀君は私の自宅に泊まりに来る様になっていた

しかし、それにも関わらず未だに秀君はキス以上の事をしようとはして来なかった
きっと私に気を使ってくれているのだろう
そんな紳士的な優しさが嬉しく思うと同時に、心のどこかでホッとしている自分もいた

3ヶ月経つ今も、私の心はまだ半分以上悟の元に置き去りにしたままだったのだ
そんな気持ちで、秀君を受け入れてはいけない様に思えた
勿論、それは私の身勝手な考えだと言う事も重々承知していたけれども・・・



私は、フッと本屋の前で足が止まった

何かに呼ばれる様に、自宅へ急ぐ足を止め私は本屋に入っていく

私は読書が趣味と言えるくらい本が好きだった
そう言えば、ここ最近全然大好きな本に触れる事も無かった事を思い出す


何か良い本あるかな・・・

私は、規則正しく並べられた本を眺めながら歩く

暫く進むと、風景などの写真集のコーナーの前に辿り着いた

そこには所狭しと、風景や動物、植物など様々な写真集が並べられていた
私は何と無く一冊ずつ手に取りながらぼんやりと眺めて見る


そう言えば、悟もいつかこうやって写真集を出したいって言ってたよね

私は、懐かしげに悟の語っていた夢を思い出す

それとほぼ同時に私は1冊の写真集を前に手を止めた

その手の先には、綺麗な空の写真集
温かくて・・・大きくて・・・どこか懐かしい・・・

私はこの写真達を知っている様に思えた


私は、その写真集を手に取る
そして、次の瞬間
私は息を飲む

同時に鼓動が早く波打つ
全身の血液が沸き立つ感覚を覚えた



そこに印刷されていた名前・・・
飽きるくらい見た事がある名前・・・


『空色の愛...   高木 悟』



さ・・・と・・・る・・・


私は呆然と立ち尽くす

間違いない
同姓同名なんかじゃない

この写真は悟の写真そのものだった

私は涙が溢れてくるのを必死に堪える


こんな所で、悟の欠片に出逢えるとは思っていなかった

元気にしているんだ・・・

そう思うと私の心が温かくなった

夢・・・叶えられたんだ・・・

私はその写真集を抱き締める
堪えきれない涙は、止め処なく溢れもはやどうする事も出来なかった

そんな私に気付いた店員が声をかけてくる

「お客様・・・どうされましたか?」

写真集を抱き締めて泣く女

きっとこの店員には奇妙に映った事だろう

「いえ・・・何でも・・・これください」

私はそう言って店員に写真集を差し出した



私は足早に自宅へ戻ると、すぐに写真集を取り出して開く

様々な空が映し出されている

この空全てが、悟の瞳に映ったのかと思うと愛しくてしょうがなかった


すると私の目に出版社の名前が止まった


もしかしたら、この出版社に問い合わせたら悟の居所が解るかもしれない

そう思った私は、早速電話をかけてみた


胸は期待と不安にはち切れそうだった

何度目かのコールの後、スタッフと思われる男性が電話に出た

『もしもし?』

私の鼓動の音が男性に聞かれてしまうのでは無いかと思うくらいに私は興奮していた

「あ・・・もしもし・・・お伺いしたい事があってお電話したのですが・・・」

『はい、何でしょうか?』

「あの、今日高木悟さんの写真集を購入した者なのですが・・・その・・・知り合いなんです・・・差し支えなければ高木さんがどこにいるのか教えて頂ければと思いまして」

私の問いかけに明らかに困惑しているのが伝わって来る

『そういう問い合わせは・・・答えられない決まりでして』

当然の返答だ
無理も承知の上である
それでも私は、少し粘ってみせる

どうしてももう1度逢いたかった・・・
秀君がいるにも関わらず、私はその衝動を止める事が出来なかった


『少々お待ちください』

あまりに粘る私に溜息交じりに男性はそう言うと、電話を保留にする

暫く流れる保留音

私は、手の振るえが止まらなかった

『お待たせしましたお電話変わりまして、私編集長をしております神谷と申します』

暫くして、保留音が切れると先程とは違う少し低めの男性の声で電話が繋がった

「あ、もしもし・・・ご迷惑をおかけして申し訳ございません・・・どうしても知りたくて・・・」

私は神谷と名乗る男性に向ってそう告げた

『いえ、失礼ですがお名前をお伺いしても宜しいでしょうか?』

その声は少しも苛立ちを感じさせず実に丁寧で優しかった

「・・・私・・・戸田と申します・・・戸田玲です」

一瞬、躊躇するも私は自分の名前を名乗る

『・・・戸田様ですね』

少しの間の後に、神谷さんは続けた

『申し訳ございませんが、今回はカメラマンの高木の意向でファンレターなどの外部からの接触はご遠慮頂いております。戸田様が高木の熱心なファンである事は私達も嬉しく思いますが、今回はは大変失礼ではありますが、どうぞご理解頂ければと存じます』

私は少しの間を置いて仕方なくお礼を言って電話を切った

この神谷さんの言う事はひとつも間違ってはいない
私は肩を落としたまま写真集を見つめる


そして、大きく深呼吸をすると私は立ち上がってキッチンへ向った

イヴと言うこんな大切な時に私は何をしているのだろう
あのまま連絡が取れたらどうしたかったの??

私は秀君に対して後ろめたい気持ちで一杯だった



時計が午後19時を指した頃
インターフォンのチャイムがなった

きっと秀君だろう

私は足早に玄関を開ける


「よっ!」

いつもと変わらない秀君の笑顔
胸がズキンと痛む

何も知らない秀君は、いつもの様に私を抱き締めた

苦しいよ・・・そんなに優しくされると心が痛い・・・

私は今にも泣き出しそうな気持ちを堪えて、気付かれない様に笑顔を作る


「玲、凄いじゃん!美味しそう!」

部屋に上がると、秀君は感激した様に声を上げた

「うん、秀君仕事頑張ってるだろうって思って頑張っちゃった」

私はグラスを取りにそのままキッチンへ向かう

グラスを2つ取って戻ると秀君は背を私に向ける状態で立っていた

「秀君??」

私の声に、秀君は振り向く

その手には、悟の写真集を持っていた

「・・・綺麗な写真集だな」

そう言って秀君は笑う
むしろ、必死に作り笑いを浮かべている感じだ

「あ・・・そ・・・それね、たまたま本屋さんで見かけて・・・」

私は、言い訳がましく話し出す

だけれども、秀君からの反応は無かった
秀君の表情からも笑顔は消えていた


重い空気が流れる


時計の秒針だけが部屋の中に響く



「・・・イヴに見たくなかったな」

秀君が重い口を開いて、独り言の様に呟いた

「・・・ごめん」

私は声にならない声で呟く

秀君を直視出来ず、私は俯いた

次の瞬間、秀君は悟の写真集を床へ投げ捨てると強引に私の腕を掴み寝室へ引っ張って行くとそのまま私をベッドに押し倒した

私は突然の事に声が出ない

驚きのあまりに身体が硬直する

秀君は息つく暇もなく、私に唇を重ねて来た
今までにない強引なキスに私は両手で秀君の肩を押し戻そうとする
だけれども、秀君の身体はビクとも動かない

反対に、私の両腕を抑えつけるとそのまま秀君の唇は私の首筋を辿る

「いっ・・・やっ!!」

私は首を横に振り必死に抵抗する

不意に秀君の唇が私の首筋から離れる
それと同時に私は目を開けて秀君を見上げた








そして、私は言葉を失くす



秀君のこんな悲しそうで辛そうな表情を私は1度も見た事がない
秀君は何も言わずただ、悲しそうに私を見下ろしていた


そして、その瞬間改めて私は秀君に甘え切っていた事を自覚する

この3ヶ月間、秀君は1度も私に手を出そうとはして来なかった
私は、それをどこかで当然の事だと認識していたのかもしれない
それが、どのくらいの秀君の我慢で成り立っていたのか・・・私は1度も考えていなかった


言葉無く見つめ合う私達

私は、ゆっくりと両腕の力を抜く


今、私が大切にすべき存在は・・・悟じゃない
自分の事よりも私の事を優先にして考えてくれる秀君なんだ

私はあの日、秀君と歩く事を決めた

いつも気持ちが揺れている私を、そっと見守ってくれているのだって秀君

私が秀君を拒む理由はあるの?
私に拒む権利なんてあるの?

こんなに愛してくれている秀君を私はいつも傷つける
最低だ・・・


私の力が完全に抜けた事に気付いたのか、秀君の手の力も緩む

私は、両手を秀君の頬に伸ばす

いつも私に元気をくれる笑顔を、私自身が消しかけている
反対に私が拒絶されてもおかしくない

私は微かに震える腕を秀君の首に回す

それを合図に秀君は私を力一杯抱き締めた
私も、力一杯秀君を抱き締める

そして、もう一度秀君は顔を上げると今度はいつもの様に優しく唇を重ねた

その唇は私の頬を伝い、耳元へ

何度も小声で、愛しそうに私の耳元で「愛してる」と囁いた

それはまるで、何か確かなモノを求めているかの様に
不安と刹那さが入り混じると共に、今までに無く甘く私の耳に響いた

私はその声を聞きながら、秀君の肩越しに悟の残像を見ていた

目の前に走馬灯の様に悟の姿が横切っていく

私は、固く瞳を閉じると秀君の微かな呼吸の音に耳を傾け

長い夜へと身体を解き放つ

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