次の日の夜
玲は早速、チャットへ参加した
確かに言われた通り、昼間よりも断然人が多い
でも、会話が出来ない程に多い訳ではなく良い感じの人数である
昨日のメンバーもいた
主婦もいれば、会社員もいるし、学生もいた
年齢層はバラバラ
それでも、分け隔てなく和気藹々と盛り上がる事が出来た
恋愛の事、仕事の事・・・様々な話題が絶える事なく続く
玲はすっかり打ち解け、その日から頻繁にチャットに顔を出す様になった
朝起きたら、真っ先にPCを立ち上げメンバーをチェックし
顔見知りのメンバーがいれば、会話に参加した
気が付けばすっかり誰もが玲を常連だと思い込むまでになっていた
・・・と言ってもまだ初めて顔を出してから3~4日程度の時間しか経っていなかったが
仕事をしていない玲には、腐る程に自由な時間があった
その大半をチャットで占めていたのだから、当然と言えば当然の話である
あっという間に他のメンバーとも顔馴染みになった玲にひとりのメンバーが話しかけてきた
“玲は千葉出身なんだ?実は俺も出身は千葉なんだよ”
それは夜のメンバーに毎回入っているKeiだった
だけど、それまで会話らしい会話は交わした事がない
常連なんだろうっと言う認識はあったものの、玲にとってはあまり印象の強いメンバーではなかった
“そうだよ~。Keiも千葉出身なんだ!奇遇だね!”
初めてに等しい2人の会話が始まった
話を聞けば滋賀県に住む24歳で、滋賀には小学校3年から父親の仕事の都合で住んでいるらしい
最近になって仕事に余裕が出来て殆ど玲とチャットに参加するようになった時期が同じだった
玲は、てっきり常連の中の常連だと思っていただけに少し意外に思った
“Keiは今何しているの??”
玲の質問にKeiは答えた
“うむ、酒を飲んでる”
玲は思わずPCの画面の前で噴出す
“Keiってさぁ・・・考えてみたらいっつもお酒飲みながらチャットしているよね?”
毎回、何となく彼と誰かの会話を見たりしていたがいつもお酒を飲んでいる話題だった
それが何だか妙に可笑しい
“これが毎日の楽しみなんですよ(笑)”
ちょっとオッサン臭いけど、玲はKeiに兄の様な親近感を覚えた
『この人、アル中だな』
玲は1人でPCの画面の前で笑いを堪える
何て言うのか、どことなく話していて居心地が良い
会話のテンポが絶妙に合う
それまで、その他1人のメンバーだったKeiはこの日を境に玲の中で『おもろい兄さん』と言う肩書きが付けられた
その日から、Keiと玲は頻繁に会話をする仲になっていった
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