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フィクションなのかノンフィクションなのか... 想いが織り成すストーリーの世界
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掲載作品の紹介
●空色...愛色...(現在掲載中)
●愛色の彼方 (現在掲載中)

両作品共に、主人公の名前は同じですがストーリとしては全く別物です。
それぞれの世界が織り成す淡く切ない物語をどうぞお楽しみください。
プロフィール
HN:
葵 膤璃
性別:
女性
自己紹介:
Aoi Tuyuri
恋愛体質
本物の愛を探し求めて彷徨い続けています
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けたたましく目覚ましが鳴り響く

私は大きく手を上げるとそのまま目覚ましの上に振り落とした

起きなきゃ・・・

重い頭を抱えて身体を起こす

今日もまた新しい1週間が始まる

私は熱いシャワーを浴びて、支度を済ませると自宅を後にした

混み合う電車
肩と肩がぶつかり合う
息苦しい空間・・・
毎日変わらないワンシーン

無表情の群れの中で、やはり私も同じ表情を浮かべているんだろうな・・・

やっとの思いで、最寄の駅に到着する
人の波に流されるまま電車を降りる

会社に着くと、私はPCの電源を入れる
通勤の途中に買って来たアイスティーを飲みながら一通りのメールチェックを済ませる

私は都内のデザイン関係の企業に勤めている
ずっと憧れて念願叶って手に入れた職業
やりがいがある仕事

入社3年目
以前よりも任される仕事が増えて、やりがいを感じ始めているこの頃

だけど、前の様に意欲的な気持ちになれない
ここの所、煮詰まっている・・・

そろそろ、良いアイディアを出さないと・・・

そんな焦りだけが募る


「戸田、おはよう」

後ろから、少し低い声がした

「あ、安藤君おはよう」

私は、振り返って安藤君を見上げる

彼は安藤秀明
愛嬌たっぷりの爽やか好青年の安藤君は社内でも、女性陣に人気があった
私より2歳年上だけれども、同期である

「何だよ〜戸田!今日も浮かない顔しちゃって!元気スマイルがお前の取り得だろ?」

安藤君はそう言って私の肩を小突く

「そんなんで、今日の地獄のミーティング乗り越えられないぞ!」

地獄のミーティングとは週に1回上層部の人間を含めて行われる長時間のミーティングの事である
ここではハイレベルな意見交換が成され、各自がそれぞれ自分のアイディアを発表し評論を交わす
とにかく社内の人間にとって、最も精神力を使う1週間で最も高い山と呼ばれていた

安藤君とは入社当時からお互い励まし合って頑張ってきた仲で、私は恋愛の相談もいつも安藤君にしていた
異性の大親友とも呼べる存在だった

「あ、そっか・・・今日はミーティングだ」

私はすっかりミーティングを忘れていた
ヤバイ・・・

「まさか、忘れてたとか・・・??」

安藤君もさすがにビックリして目を丸くした

「う・・・うん・・・どうしょう・・・」

もう半分泣きたい
そもそも、こんな重要なミーティングが週初めの月曜日にある事自体がおかしい!

私は慌ててPCに向って、ミーティングの資料をまとめ始める

「しょうがないな、俺も手伝ってやるよ」

見兼ねたのか、安藤君も隣りの自分のディスクにつくとテキパキと手伝い始める
そんな安藤君の助けもあって、お昼前に一通りまとめる事が出来た

「ありがとう〜お陰で助かったよ!」

私は深い安堵の溜息をつく

「ま〜俺にかかれば不可能はないって事だな!感謝するならランチくらい驕りなさい!」

安藤君も背伸びをしながら冗談ぽく笑って見せる

「OK、今日は任せて」

私も安藤君に釣られて冗談ぽく笑って見せた

…………………

2人は会社の近くにあるパスタ屋へ入った

窓際の席に向かい合って座る

私はサーモンのクリームパスタ、安藤君はカルボナーラを注文する

しばしの沈黙

ウエイターが忙しそうに慌しく水をテーブルに置いて去って行く

「最近どうよ?」

安藤君が沈黙を破った

私は、置かれた水の入ったグラスを見つめたまま曖昧に首を傾げる

「・・・彼氏と別れて3ヶ月くらい?やっぱりそう簡単には立ち直れないよな」

安藤君は外の景色を見つめながら独り言の様に呟く

「うん・・・頭では解ってるんだよね、立ち直らないとって・・・こんなんじゃ仕事にも差し支えるし」

私は、曖昧な笑みを浮かべてみる

「それが普通じゃない?本当に好きだったら尚更、無理に立ち直る必要もないと思うし」

安藤君は私に視線を戻すとそう一言添えた

「忘れる努力をする必要はないと思うよ」

私達の間に暫くの沈黙が流れる
そう、誰かにそう言って欲しかったのかもしれない
元気になってとか・・・そういう在り来たりな言葉じゃなくて
忘れなくて良いって・・・彼を想っていて良いって言って欲しかったのかもしれない
誰かに、立ち直れない自分を肯定して欲しかったのかも

「お待たせしました」

ウエイターの声に我に返る

「うっまそーじゃん!戸田、食えって!まずは体力が一番!体力には食事だ!」

安藤君はニッと笑う



……………


会社に戻ると、早速ミーティングが開始された

「今日は皆さん、忙しい中参加ご苦労様です。今日は今年の冬季に置ける・・・」

ミーティングを取り仕切るのは、社内でもやり手で有名な飯島久美さん
長い髪をアップにまとめ、細身のスーツを品良く着こなす大人の女性
密かに入社当時から私が憧れている女性が、この久美さんだった

やり手の男性陣を差し押さえてバリバリ仕事をこなす姿は、何とも言えないくらいカッコイイ

入社した頃、何も解らない私に親切に仕事を教えてくれたのも久美さんだった

「いつも可愛い女でいなさい」
久美さんは冗談ぽく笑ってよく私に言っていた

「30過ぎて、可愛くいられなくて男を相手に張り合う事を生き甲斐にしてしまう様な女は男にとって障害物でしかなくなってしまうのよ」
久美さんは、肩を竦める仕草をしながらよく笑っていた

普通の女なら卑屈になってしまうのかもしれない
女ひとりで、社会に向き合う事はきっと想像以上に厳しい事があるのだろう

だけど、久美さんはいつも自信に満ちた笑顔を持っていた
自分の生き方にプライドを持って歩いているのだと思う

私は、いつもそんな久美さんの様な女性になりたいと憧れを抱いていた

私にとって遠い遠い憧れの人


「じゃ、最後は玲ちゃん」

久美さんのハスキーな声で私は顔を上げる

「あ、はい!今回私が提案するのは・・・・・」

私のプレゼンが終わると久美さんが口を開いた


「今回のみんなのプランはとても良いモノがあったと思う。玲ちゃんを除いてね」

久美さんの一言に、場の空気に緊張感が走る

「・・・玲ちゃん、どうしたの?アナタは斬新な切り口が持ち味なのに、それがここ最近全然発揮されていない。迷いを感じるのよね・・・仕事に集中出来ていないと言うか」

久美さんは私をまっすぐに見据えてそう告げた

私は返す言葉も無い

「そんな在り来たりなプランは素人でも出来るわ。アナタがやる気を出さないのなら、外れて貰うしかないと私は考えているのよ。アナタの斬新さを評価して私は抜擢したつもりだけれども、期待外れだったのかしら?中途半端な仕事をするなら、やらなくて結構よ」

久美さんはそう私に言い放つとミーティングルームを出て行ってしまった

私は、その場に立ち尽くしたまま身動きひとつ出来ずにいた

久美さんは仕事に厳しい人
中途半端な仕事は許さない
妥協をしない人

久美さんの言う事は、確かに的を得ている

今の私にはゆとりも無ければ信念も無い
恋愛がひとつ駄目になっただけで、私は全てがボロボロになってしまう
何て弱い人間なのだろうか・・・

気持ちが宙ぶらりんのまま揺れているだけ

私は唇を噛み締めて俯く

悟がいないだけで、私はボロボロだ・・・

私はいつからこんなに弱く脆い人間になってしまったのだろう

遣る瀬無い想いに襲われる・・・

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